冊子 tempo 第1号「テンポ」 / 2020

Hello, My name is Tempo.

飛行機が上空へとその高度を上げるとき、
東京の街を埋め尽くす光の粒が、細胞に、
縦横無尽に走る首都高速道路が、血管に、
それはまるで人体の鼓動を眺めているような気持ちになりました。

この世界とピントが合う瞬間、
小さな営みが連なって、急に大きな網目に立ち上がることがあります。

縄文時代、人は土を焼き固めることを覚えました。
科学反応、テクノロジーのはじまりと言えます。
そこから脈々と進化し続けて、今、テクノロジーが生み出す光の拍動は、
より速く、より強く、と躍動しています。

加速する拍動、眩しいリズム。
ふと、精神と身体が置いていかれそうになります。
生身の「わたし」が生きていることが、こぼれ落ちそうになるのです。

立ち止まって、息を整え、
わたしのタイミングでその光のリズムに呼応しながら、
テクノロジーという概念、

それを生み出した人間という自然が包み持つ本質をみつめ、ひらきたい。
それは、人間と宇宙が溶け合うところ。
ミクロとマクロがつながるとき。

tempoは、テクノロジーと自然にピントを合わせながら、
今を生きる術を思考する、毎号ワンテーマの観察メディアです。

第1号のテーマは〝テンポ〞。

1日は24時間。音の速さは秒速340メートル。
ウサイン・ボルトは100メートルを9秒58で走りきる。
雨の降り始め、卵を茹でる時間、私とあの人の歩く速度……。
それぞれのリズム、それぞれのテンポ
テンポは単純な速度を表すだけではなく、
人の内なる感覚に基づいた「時間」そのものかもしれません。
あの人が携えている時間とは?
私たちはそれぞれのテンポを観察しました。

<目次>


生命のTEMPO  
時計遺伝子と動的平衡
福岡伸一(生物学者)
構成・文:水島七恵 イラスト:山口洋佑


音のTEMPO  
アンダンテ。歩くくらいの速さで
阿部海太郎(作曲家)
構成・文:水島七恵 撮影:高野ユリカ


言葉のTEMPO
言葉の射程距離 
古川日出男(小説家)
構成・文:水島七恵 撮影:高野ユリカ


身体のTEMPO
ふたつの時間軸を生きる身体
金森 穣(舞踊家・演出振付家)
構成・文:水島七恵 撮影:篠山紀信 イラスト:塩川いづみ


写真のテンポ  
視覚のシンコペーション
長島有里枝(写真家)


食のテンポ 
生き物同士のやりとりは、
いつも揺らいでいる
小桧山聡子(山フーズ主宰)
構成・文:水島七恵 撮影:高野ユリカ


土地のテンポ  
本土最東端のまち、根室から
古川広道
(VOSTOK代表・ジュエリーデザイナー)
中村美也子
(VOSTOK役員・フードディレクター)
野﨑敬子
(VOSTOK役員・ディレクター)
構成・文:水島七恵 撮影:古川広道、VOSTOK labo


宇宙のTEMPO  
100万分の1 秒と100 億年
水谷 仁(惑星科学者・JAXA 名誉教授)
構成・文:村岡俊也

それぞれのテンポ

tempo第1号

企画・プロデュース:相崎香帆里(富士通株式会社ソーシャルデザイン事業部)
企画・編集ディレクション:水島七恵
アートディレクション・デザイン:樋口裕馬
表紙、裏表紙の絵:中島あかね
発行:富士通株式会社ソーシャルデザイン事業部
印刷:株式会社八鉱美術